第一期塾生最終レポート

小泉哲広 原田剛志 永井恒男 石川未来子 三宮若菜


小泉哲広

 自啓共創塾で学んだ約8ヶ月間、振り返ってみればまさに自調自考の連続でした。自身の中でどこか曖昧だった日本の成り立ちと生い立ちを振り返り、その時代その時を生きた人の思いと行動を追体験する作業は、毎回時間が足らないと感じる内容で、毎回何かしら気づきをいただいた時間でした。参加者にこれだけ年齢の幅があり、豊富な経験と多様な価値観をお持ちの方が揃っているからこそ、自分の中にはない、もしくは気がつけていない、様々な視点で「日本のこころ」を探ることができる。他者の意見があるからこそ、自らの思考や価値観を変えていくこともでき、そうやって私達自身が自ら答えを出していくその過程にこそ価値がある。学びとは与えられるものではなく、自ら気づき築くものであり、情報や知識ではないこと。それを改めて教えていただいたことが、何よりの収穫でした。また「にほんのこころ」とともに、自分の源流を探す旅でもあったと思います。

 最終レポートのテーマとして、私は生活を一番にあげました。それはアニミズムから始まり明治以降までは色濃く受け継がれていたであろう日本的霊性と、それを基調に神仏儒の習合によって出来上がった数々の文化風習。またその奥にある思想や哲学が、今現在自分自身が実際に感じ、共感できる一番身近なものであったからです。そして一連の塾活動を通して、なぜ多くの気づきを得られたかと言えば、それは過去の体験や経験知識と紐づくからであり、そうやって腑に落ちて感じられるからこそ納得でき、深い理解にも繋がる。何よりも自分の感覚でモノゴトに触れる機会をつくることが出発地点だということが痛いほど分かったからでもあります。11月に参加させていただいた五感塾がまさにその典型でした。何を学ぶのかではなく、どう学ぶのかということです。

 塾と自学を通して、神仏儒の世界は一つ一つが奥深く、それらがベースとなっている日本独自の文化、風土、風習、芸術、~道が、実は身の回りに溢れていることを再認識しました。「にほんのこころ」を形作る個々のピースとして、それぞれに素晴らしい価値観があり、普遍的で言語や人種、国を超えて評価される思想や哲学があることもわかりました。

 ではどうしたら、この「日本のこころ」に秘められた本質をきちんと理解し、受け継ぎ、そして次の世代へ渡していけるのか。それにはまず教育を変えることが最初に考えられますが、人も時間もお金も、沢山のリソースが必要となるため物理的な限界があることは周知の事実です。またその公共性からどうしても対応ができない、変えられないものも出てくるでしょう。だからこそ、個々人の毎日の生活に根付く形で、繰り返し繰り返し、大人は意識的に、子供は無意識にそれらを受け取りかつ手渡すこと。各家庭や地域で、老若男女問わずそれを続けること。その機会や場を創ることが肝要なのだと思います。

 失われたように見えて、中にはしっかり受け継いでいるものもありました。教本で取り上げられている偉人と自分との乖離が大きいと感じつつも、同時に共通点が見つかることもありました。それは、現時点でも常日頃から無意識に触れて受け継いでいるものがあるからで、だからこそ日々の生活を重要視する必要があると考えます。西洋哲学が普遍性をベースにしているのに対し、東洋哲学が社会や生活をベースにしているように、忙しい毎日の中で蔑ろにされている「日本のこころ」の欠片を見つけることが大切なのではないでしょうか。国際規模で世界的な大局観を意識することも、もちろん大事ですが、社会は人が作る一人一人の意思と行動の集約です。過去の日本人がそうしてきたように、今を生きる我々が日々の営みの中でも出来る小さな習合を絶えず行っていくこと。個々人の選択や意思から変えられるもの、それでしか変えられないものがあるのではないでしょうか。

 個人的には来年から音楽関連の習い事や武道の道にも足を踏み入れ、また家族親戚を始め身近な人たちと一緒に、二宮尊徳さんの芋誇示会、薩摩デュケーションを取り入れることもしてみたいと考えています。この塾を通して学んだことを糧に、引き続き日常的に「にほんのこころ」を実感しつつ、自調自考を続けていきたいと思います。


原田剛志

自啓共創を通して、普段では直接学ぶことの出来ない先生方より貴重な教えを学ばせて頂いたことは自身の今後の人生において大変なる財産となりました。心より感謝申し上げます。

 

自啓共創の学びを通して実践した事を簡単ではございますがご報告させて頂きます。

・先人の功績により今日がある事に感謝する

・日々、自身と向き合い気持ちを整理する

・先人の志があって今があるのであるから、我が志をもって目の前の人に接する事

・先人の教えを学ぶ事に終わりはない

・日本文化を次世代へ継承する(茶道、小唄、空手を毎月実践中)

・積小為大の精神で世の中に役立つ人間に成り、次世代へ繋がる活動として、20代の方々へ先人の学びを共有させて頂きました。

・地元の高校生1年、2年生に招いて頂き、二宮尊徳さんの学びの授業をさせて頂きました。

 

今後も引き続き、利他の精神で尽力し続けたいと思います。

 

最後に自啓共創の先生方、そして共に学んだ同回生の皆様に心より感謝申し上げます。


永井恒男

「世界のための日本のこころ」を学んで

 

(1)今後どのような世の中にしたいか。そこに日本のこころはどう貢献できるか?

私のPurposeは「世界平和とイノベーション」です。将来、地球環境が少しでも良くなること、それから行き過ぎた資本主義を是正し、公益資本主義が当たり前になる世の中にしたいと考えています。また不要な争いが少しでも減り、人々が平穏に暮らすことが、私が実現に貢献したい世界です。

 

地球環境問題の解決において日本の文化が貢献することは間違いない。自然に対峙するのではなく、共生するスタンスが基本となる日本文化は世界の規範となるであろう。また日本文化が、芸術においても、言語における自然物の捉え方すら脳科学的にもユニークであることは大変な驚きである。

 

環境問題の解決には世界各国が一致団結して取り組むことが重要である。この点に関しても、異なる立場を和を持ってアウフヘーベンしうる日本のこころの役割は大きい。権力ある者や多数派に対して迎合するだけでなく、スマートパワーを日本のこころを持つ人々の活躍を願います。

 

行き過ぎた資本主義から公益資本主義への転換については、澁澤栄一らを手本にして短期志向、機関投資家偏重を抑制する必要がある。これは現在の日本的経営のままで良いというわけではない。経営コンサルタントとしての意見を述べると、成長のためにしっかりとヒトやモノに投資し、忖度が多く、主体性が低い組織カルチャーを変えていくことが重要だと考えている。

 

(2)そのために、自分がこれから、または、将来取り組んでみたいこと。

利他心、王道と自己愛、覇道 自己愛の制御と利他心の発露

自然、他者との調和


石川未来子

「日本型リベラルアーツ」を地方から共創する

 

北から南に縦型に広がる島、日本。海に囲まれた島には自然環境の違いがあったため、地域ごとに自然と共生する知恵が育まれ、少しずつ異なる文化を育み、小さな島の中に多様な文化が生まれました。特に島国日本にとって“自然”は畏れ敬うものであり、自然と寄り添った文化が形成されました。文化の発展と衰退には様々な要因が考えられますが、近代化(産業の発展、機械化、自動化、効率が重視される世の中)は一方向(経済成長)の発展を推進し、地域固有の文化が少しずつ衰退していったことが想像されます。

 

私には、2020年に起きたコロナ禍は、そのような一方向の発展に警鐘を鳴らしたように感じられました。世界が同時に足踏みをせざる得なくなった禍は、想定外の出来事に直面した時に何をすべきか、課題に向きあう時間を全員に与えました(日本では東日本大震災がその時間を作りましたが、まだ地域に閉じたものでした)。

 

そのような状況で与えられた問い「これから先、どういう世の中にしたいか」。

 

私は大きな流れから少し離れ、自分の手の届く範囲の社会課題から解決に取り組み、多様な解決策を持つ社会を作ることが大事なのではないかと考えます。社会課題先進国と言われる日本、その日本には早くも社会課題と向き合っている地方があります。実践の場は用意されています。人口減少(少子高齢化)による耕作放棄地、森林荒廃、鳥獣害といった問題と向きあうことは、畏れ敬うべき自然との共生という地球規模の課題解決に繋がっていくでしょう。そして地方にはそれらの課題に向き合ってきた先人の知恵がまだ、うっすらと残されています。地方に入り、先人の知恵を学び、自然の脅威と向きあい、衰退した文化の回復に努めることが「柔軟な行動力=レジリエンス」を培うことに繋がっていくと考えます。

 

薩摩藩が「郷中教育」の中で行なっていた「詮議」は、今でいう“未来洞察”の手法とも言えますが、郷中教育では世代を超えて「詮議」していた点が重要な点です。地方に大人も子供も入り、まずは地方の社会課題解決に取り組み、地方から「日本型リベラルアーツ」を共創する動きを推進し、多様性に富んだ日本を取り戻します。そして日本の多様で美しい文化を世界に発信していきたいと考えます。


三宮若菜

~今後どのような社会をめざすか~

 

14回の話題提供/ディスカッションを通して感じたことは

・自分がエンジニアで、仕事では論理的なことを求められることが多い。その反面、感覚的なことや芸術などにも興味がある。

・相反しているようにも見えるが、その両方に興味を持っていることは自分にとって大きな武器になるかもしれないと感じた。

 

(1)これからめざすこと

・「調和」をめざす:エンジニアリングと人間の調和→ビジネスの広がり

 エンジニアリング:論理力がメイン

 人間力:理屈や論理だけでは説明できない「第6感」も含む

      感覚的、芸術的、自然、文化を含んだもの

 両方を兼ね備えるとビジネスにつながる

・「多様性」を調和につなげる→調和することが日本人は得意であれば、今言われているダイバーシティ(多様性)を受け入れて調和することもできるのではないか

 

(2)自分が実践すること

①次世代の育成のため

・考える場を提供する、自分で考える時間を作る。言われたことをやるだけでなく、なぜそう考えるのか、それをやる理由は何か。行き詰まったときにはフォローが入れられるような時間・空間づくり

 このとき、「否定しない」「補い合う」→「多様性」をうまく使うこと

・上記考えたことを共有する時間と場を提供する。マイナスの部分を一人で解決しなくてもよい。補い合うことで、他のプラスの部分をもらえる。それが「調和」ということ

・本人や周囲の人のいいところを引き出す。課題は解決するけれども、マイナスを0にするという考え方ではなく、今からプラスにするという考え方

※職場では次世代リーダーの育成につなげ、家庭では将来社会を担う人間(少なくとも、自立した大人)を育てることにつながると思っている。

②自分のため

・今はバランス的にエンジニアとしての時間が多い。もっと自然とか芸術に目を向けたい。

・実は自分は集団とかチームワークとかを作るのが苦手であり自己肯定感が低い、典型的な日本人。暗示でもいいから、これでいい、と強引に思うことが必要と感じている。